第2回 「『数字さえ出せば良いんでしょ!?』という個人主義からの脱却」(前半)

代表の佐藤が企業人事のための専門誌、「月刊人事マネジメント」に連載している 「7つの習慣®」で実践する組織作りから第2回目のご紹介です。
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第2回のエッセンス
□ 個人の価値観を超えた組織の「理念と価値観」が、相互理解と協力を生む
□ 共通言語を作るには「押し付け」ではなく「理解と共感」の教育
□ 共通言語が生まれると、組織の変化が加速される
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今回の事例は「数字さえ出せばいい」「自分さえ良ければいい」という
個人主義で悩まれていたサービス業A社です。
A社は2005年頃から好景気に支えられて急成長。
中途の即戦力採用により管理職を補充。
その下に新卒を配置することで組織を2年で3倍へ拡大しました。
採用にあたっても“頑張って業績をあげた分だけ評価される”という
成果主義を導入し、優秀な人材を惹きつけました。
しかし、組織が大きくなる中で、弊害も生まれました。
規模の拡大に伴って、事業部、部、課、チームと組織も分割。
“自分の事業部”“自分のチーム”にしか興味がない
縦割りの風土が生まれてきました。
皮肉なことに、縦割りと個人主義を加速させたのは、
優秀な中途人材と、彼らを惹きつけた成果主義でした。
優秀な中途人材=前職で成果を残してきた人材です。
成果をあげる自分なりのノウハウや行動力、
実績に裏付けされた自信を持っています。
彼らが各チームや部課のトップとして、メンバーに影響していったのです。
優秀であるだけに影響力も大きく、
チームや部課は「トップ個人の価値観」に染まっていきます。
さらに、自分が頑張った分だけ評価される成果主義が、
“他と協力し合う”ことを阻み、縦割りと個人主義の風土を強めました。
幹部のCさんから伺った強烈なエピソードがあります。
部下のHさんを叱った時のことです。
Hさんは納期を守ることが苦手で、何度か注意していたそうです。
Hさんが何度目になるか分からない納期遅れを起こしたとき、
Cさんは注意しました。
「納期を守れと何度言っている。
お前1人じゃなくて、周りにも迷惑がかかる。
遅れるなら遅れるで、事前に報告・相談して欲しい」
すると、Hさんは反論してきました。
「相談したって、意味ないじゃないですか。
『大変だけど、頑張れ!』で終わりですよね。
『周りに手伝ってもらえ』とか『先輩に相談しろ』って言いますけど、
誰も手伝ってくれないですよ。
みんな自分の数字しか興味ないです。
会社だって、評価は個人の業績ですよね。
『自分のことは自分でどうにかしろ』ってことですよね。」
縦割りと個人主義の風土になってしまったA社が
成長を続けられるわけがありません。
成長が鈍化すると共に、組織の閉塞感だけが募ってきました。
当時のA社は「部課をまたいでの異動は転職と同じ。
同じ会社だと思わない方がいい」と言われるほど、
組織はバラバラだったそうです。
危機感をいだいた経営陣が導入したのが7つの習慣®でした。
協力し合う風土を作るための考え方教育です。
A社では、5年に渡って考え方教育を繰り返しました。
その結果、社風は徐々に変わり、業績も過去最高益を更新するまでに回復。
5年前を知るCさんは「同じ会社だとは思えないぐらい。
現場の社員が部門をまたいで協力し合ったり、
改善提案がどんどん上がってくるなんて、
当時はあり得ませんでした。」と言います。
A社が考え方教育に成功した理由を振り返ると、2つのポイントがあります。
1つは社員への考え方教育と同時に、“会社のミッション(理念)”を固め直したこと、
もう1つが“考え方教育のやり方”を工夫したことです。
(後半へつづく)